高齢者の介護において、心のケアは身体のケアと同じぐらい重要なものです。近しい人との別れや社会的地位の喪失、経済的な不安など、失うものが増える一方の高齢者にはストレスとなる要素が数多くあります。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための自粛が、高齢者をさらに孤立させてしまう危険もあります。メイクがもたらす心理的効果への理解が広がる中で、メイクセラピストの存在が介護現場で大きな注目を集めるようになっています!
メイクセラピーを介護ケアに用いる目的は、高齢者のQOL(生活の質)を向上させることです。介護サービスを受ける高齢者は、人の手を借りることに大きなストレスを感じてしまいがちです。QOLが低下すると、心身の健康を脅かすリスクが高くなります。介護現場においてQOLが高い状態とは、高齢者が毎日の生活を心から楽しんでいる状態のことです。そのために注意したいのが、自分でできることにまで周囲が手を貸してしまわないことです。
介護を必要としている高齢者が毎日を楽しく過ごすためには、心の状態を安定させるためのケアが必要です。メイクやネイル、ハンドケアやヘアケアなどによって身だしなみを整えることは、高齢者の心の安定につながる方法のひとつです。着替えやメイクを自分でできる限りやってみることも、いいリフレッシュになります。メイクセラピーは日常生活動作の中の「整容」にあたることで、高齢者のQOLを上げるために役立てられています。
身だしなみを整えることは、認知症ケアに効果的な方法のひとつです。認知症患者を対象に行われたとある看護実践によれば、患者が身だしなみを整える習慣を約2ヶ月間続けたことにより、ほとんどの患者にBPSDの改善が見られるようになったとのことです。身だしなみが整った自分の姿を見て、意欲が向上した人もいます。このことから、身だしなみなどのケア不足がBPSDの悪化につながってしまう可能性があることも理解できます。